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大橋りえのシングル「Release myself」をリリースするにあたって、まず考えたのは、Every Little Thingとは違うサウンドをやろうということでした。
僕の聴いてきた音楽はふた通りあって、ひとつは、デュラン・デュランやカルチャー・クラブなどのUKサウンドのようなデジタルな感じのモノ。打ち込みと生の融合で、しかもメロディーがポップな曲。そして、もう一方は、ブルース・ホーンズ・ビーとかフーターズなどのUSAサウンド。それに、ジャクソン・ブラウンなどでした。
彼女のシングル「Release myself」は、そのうち後者の、カントリーというか、田舎の懐かしい雰囲気のカラッとしたサウンド・エッセンスを取り入れました。そうしたのには、きちんとした理由付けがあります。
彼女の声質は、全て打ち込みでやってしまうと、ウェットすぎるというか水っぽくなってしまう声なんです。感覚的な部分なので、表現するのは難しいんですが、ひと言で表すと、カラッとしたサウンドにすごく合う声質と言えます。そのために、どういった手法を施すかを考え、ベースはシンセ・ベースを使わずに、思い切って生ベースにしました(ゆくゆくは、全てナマで出来たらとも思ってはいるんですが…)。そうしたら、予想通りというか、しっくりきたんです。やはり、全てはヴォーカルの声質で決まってしまうということなのかも知れません。ちなみに、Every Little Thingのヴォーカル・持田香織の声はU.K.タイプのウェットなサウンドですが、そして大橋りえの声はウェットなのでU.S.A.タイプのカラッとしたサウンドが似合うと思ってます。もちろん、この例えは、あえて差別化するとすればですし、すごく分かりやすく言えばですけど…。
今回大橋には、作詞を担当してもらっているんですが、これは、最初から決めてました。今後も作詞を続けて欲しいと思っています。歌うことでもアーティスティックな部分は表現出来ると思うんですけど、やはり、本人の中から生まれた言葉を綴った作品を歌った方が、より説得力があると思うんです。だから、リリースの話が決まってからは「詞を書きためて置くように」と彼女に伝え、詞を書いてもらっていました。
その後、しばらくして彼女は自分が書いた詞を持ってくるようになったんですが、初めて持ってきたのは「Release myself」よりも、もっと狭い感じの、どちらかというともっと身近な“恋愛モノ”の詞でした。最初に“テーマ”を与えると煮詰まってしまうと思って、何も言わずにメロディーを渡したんですけど、イマイチ意図するところが、つかめなかったみたいです。それで「コンセプトはこうで、こういうテーマなんだけど、もう一度書いて来て」って、言って上がってきたのが、この「Release myself」の原型です。“ゼロからスタートする”“今までの自分に向き合う”。こういう内容・テーマの詞が出来たのは、今の彼女の素直な気持ちの表れだと思います。ただ、僕も作詞を始めたころはそうだったんですが、前後のつながりがおかしいというか、次のセクションに進むと急に意味が分からなくなったりするんです。なので、そこを「このセクションに近づけた方がいいんじゃないか」とか、その程度のアドバイスや細かい手助けはしました。でも、基本的には彼女の言葉を使っています。逆に、僕の言葉を入れすぎてしまうと、それぞれの個性がぶつかってしまうので…。その辺のバランスを取り、上手くリスナーに伝えることができるように、いい言葉に変えてあげる。今回はそこに重点を置きました。
それと、もうひとつ。彼女には「ソロだけど、それをサポートするすべての人が“大橋りえ”なんだ」と言ってあります。これは、僕がEvery Little Thingをやってきて、自分自身すごく思ったことなんですが、Every Little Thingはサポートをしてくれているメンバーも併せてみんなでEvery Little Thingなんです。だから、彼女にも「なるべく、サポートしてくれるメンバーと接する時間や、音楽をやっている仲間と一緒にいる時間、また、その人たちから教えてもらう今まで聴いたことのない音楽を聴く時間も大切にしなさい」って言ったんです。ソロをやってる女の子って、サポート・メンバーとの距離感がある人が多いと思うんです。でも、その距離は自分から縮めていかないと、いつまでたっても独りぼっちだと思うんですよ。それと「レコーディングは出来るだけ来るように」って言いました。歌う時だけ来て「はい、お疲れさまです」って、帰るのは良くないですからね。トラッキングのときから、トラック・ダウン、ギター録りまで全ての過程を見て、その中で感じられたモノや吸収出来たことはきっと次のシングルでも活かせるし、どんなことでもそうですが、一番大切なのは、人と人との結び付きですから。
最後にこれをお読みになる皆さんへ。「Release myself」は、彼女の思い(詞)と僕の考え(サウンド)が上手く調和した作品だと思っています。自信作ですので、ぜひ一度聴いてみて下さい。それと、もしかしたら彼女が歌って、僕が演奏するシーンをお見せ出来る日が来るかもしれないので、そちらにも期待していて欲しいです。
五十嵐 充(Every Little Thing)
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